「事務の仕事がしたい」
「経理について学びたい」
と思っている方は多いでしょう。
実際、事務職は求人倍率が低く、人手不足だと言われている最近でも人気が高いことがわかります。
希望者の数に対して求人が少ないので、未経験者が働くことは難しいと言えるでしょう。
未経験でも経理の仕事がしたい場合や、ライバルに差をつけたい場合、役に立つのが「日商簿記」です。
日商簿記は経理について学べて、認知度も実用性も高い資格といえます。
しかし簿記は、まったくの初心者からみると少し「とっつきにくさ」のある資格です。
そこでこの記事では基礎から学べる「日商簿記3級」について
・受験要項
・試験のおおまかな内容
・勉強方法
・どんな人が受けているのか
・仕事に活かせるのか
をまとめました。
日商簿記3級は初心者でも受験できる資格です。
まずは資格について知ってみましょう。
Contents
日商簿記3級受験要項
受験料
3級 2800円(税込)
各地域の商工会議所で受け付けているので、地域ごとに事務手数料や決済手数料がかかる場合があります。
たとえば、東京23区の場合は事務手数料が540円かかります。
かかってもだいたい数百円程度なので受験料は4000円以内には収まるでしょう。
受験資格
特になし
年齢や学歴は不問です
誰でも受験することができます
問題方式
筆記式
マークシートではないので当てずっぽうでは解答できません
問題数は全5問
試験時間
120分
合格基準
70%以上
試験日
1年に3回
6月第2日曜日
11月第3日曜日
2月第4日曜日
申込期間
6月試験 3月下旬~4月下旬
11月試験 9月上旬~10月上旬
2月試験 12月中旬~1月中旬
結果発表
試験後1ヶ月~2ヶ月後
商工会議所によって異なります
試験地
各地域の商工会議所・高校・大学・専門学校等
全国各地で開催されています
試験のおおまかな内容
ここからは日商簿記3級について
・問題の傾向
・レベル感
・出題範囲
について説明していきます。
問題の傾向
日商簿記3級は全5問で出題されます。
傾向として
第1問は仕訳問題。
第2問は帳簿記入や勘定記入。
第3問は試算表作成。
第4問は伝票会計。
第5問は精算表作成や財務諸表作成
といった内容の問題が出題されます。
あくまで過去の出題からみた傾向なので、回によっては全く違う出題のされ方をする場合もあるので注意しましょう。
日商簿記 レベル感
3級で出題されるのは「商業簿記」のみです。
商業簿記→いわゆる普通の簿記のことです
レベル感としては、経理や財務の専門担当者以外でも役立つ基礎的な内容。
青色申告書類の作成をしたり、中小企業や個人商店の経理事務に役立つ程度です。
基本的な商業簿記の知識を問われるので
・商業高校に通っている高校生・経済系の学部に通う大学生
・事務や経理に転職したい未経験の社会人
などが受験する場合が多いです。
日商簿記3級 出題範囲
問題は、毎年度4月1日現在施行されている法令等に準拠して出題されます。
3級の試験内容については、平成31年度から改定が行われる予定です。
受験する回に応じて出題範囲をしっかり確認しましょう。
平成30年度(平成30年6月10日施行の149回試験)以降に適応する試験内容を、簿記検定試験出題区分表を参照して以下に記載します。
第一 簿記の基本原理
1.基本概念
資産、夫妻、及び純資産(資本)
収益、費用
損益計算書と貸借対照表との関係
2.取引
取引の意義と種類
取引の8要素と結合関係
3.勘定
勘定の意義と分類
勘定記入法則
仕訳の意義
貸借平均の原理
4.帳簿
主要簿(仕訳帳と総勘定元帳)
補助簿
5.証ひょうと伝票
証ひょう
伝票(入金、出金、振替の各伝票)
伝票の集計・管理
第二 諸取引の処理
1.現金預金
現金
現金出納帳
現金過不足
当座預金、その他の預貯金
当座借越
当座預金出納帳
小口現金
小口現金出納帳
2.有価証券
売買
3.売掛金と買掛金
売掛金、買掛金
売掛金元帳と買掛金元帳
4.その他の債権と債務
貸付金、借入金
未収入金、未払金
前払金、前受金
立替金、預り金
仮払金、仮受金
他店商品券、商品券
5.手形
振替、受入、取立、支払
裏書譲渡、割引
受取手形記入帳と支払手形記入帳
手形貸付金、手形借入金
6.引当金
貸倒引当金(実績法)
8.商品
分記法による売買取引の処理
3分(割)法による売買取引の処理
仕入および売上の返品、値引き
仕入帳と売上帳
商品有高帳(先入先出法、移動平均法)
12.固定資産
有形固定資産の取得
有形固定資産の売却
減価償却(直接法、間接法、定額法)
20.純資産(資本)
資本金(追加元入、引出を含む)
引出金
21.収益と費用
商品売買益、受取手数料、給料、広告宣伝費、旅費交通費、通信費、消耗品費、水道光熱費、支払家賃、支払地代、雑費、貸倒損失、受取利息、償却債権取立益、支払利息など
22.税金
所得税
固定資産税など
第三 決算
1.試算表の作成
2.精算表(6桁・8桁)
3.決算整理(商品棚卸、貸倒見積り、減価償却、消耗品、棚卸、収益・費用の繰延と見越など)
4.収益と費用の損益勘定への振替
5.純損益の振替
資本金勘定への振替
7.帳簿の締切
仕訳帳と総勘定元帳(英米式決算法)
補助簿
8.繰越試算表
9.損益計算書と貸借対照表の作成(勘定式)
(参照:https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2018/01/h30shokai1-3.pdf)
勉強方法
日商簿記は知名度のある資格なので、様々な勉強方法が確立されています。
代表的なものとしては
・市販の参考書を利用して独学で学ぶ
・資格取得系のスクールに通って学ぶ
・通信教育を利用して学ぶ
といった方法が挙げられます。
それぞれメリット・デメリットを説明していきますので自分にあった方法で学習しましょう。
参考書・問題集等を利用して独学で学ぶ
なかなかまとまった時間のとれない社会人の方は市販の参考書や問題集を利用して独学で学ぶのがオススメです。
参考書・問題集を利用するメリット
独学で勉強するメリットは自分のペースで学習できることです。
まとまった時間をとってスクールに通ったりすることができない場合や、仕事の時間が不規則な場合などは、自分のペースで勉強するのがオススメ。
また、市販の参考書や問題集を利用することで、他の方法より費用がかかりません。
簿記3級は難易度の高い資格ではないので、独学で合格することも充分可能です。
市販の参考書・問題集を利用するデメリット
自分のペースで勉強できる、ということがそのままデメリットにもなります。
ある程度の自己管理が必要で、わからない部分が出てきた際、調べたりする能力も必要です。
また、簿記は定期的に内容が改定されるので自分の受験する回に合わせた参考書を選ぶ必要もあります。
ゆっくり勉強していたら手持ちの参考書とは出題範囲が変わってしまった! なんてことがないように気をつける必要があります。
内容が改定されるので、参考書や問題集を購入する際は中古ではなく新品を購入するほうが安心です。
スクールに通って学ぶ
簿記は知名度も高く受験者も多いので資格取得用の講義を行っている民間の学校が多くあります。
自分で勉強する自信がない、という方はスクールに通うのがオススメです。
スクールに通うメリット
専門の講師が教えてくれるので、わからない部分を質問できます。
また、教室に通うことで同じ目標に向かって一緒に頑張る仲間ができるので、モチベーションを保ちやすいです。
受験の際、通っている場所で団体受験できる場合も多く、同じ環境で受験することで緊張の緩和にも繋がります。
また、最新の受験情報に対応した講義を受けることができるので、改定などがあっても安心です。
スクールに通うデメリット
独学する場合に比べて費用がかかります。
講義の時間にあわせて教室に通う必要があり、時間の融通がきかない方は通うことが難しいです。
また、スクールが自宅から遠い場合なども通うことにストレスを感じてしまい勉強に集中できなくなってしまう可能性があります。
通信教育を利用して学ぶ
簿記は通信講座も多くあります。
前述した資格取得用のスクールでも、通信講座に対応している場合もあります。
スクールに通えないが講座を受けたい場合は通信講座がオススメです。
通信講座のメリット
自宅にいながら講座を受講することができます。
また、テキストの添削を受けることができる場合も多く、一人では躓いてしまうところが克服しやすいです。
スクールに通う場合と違って自分で時間を作って受講することになるので、仕事の時間が不規則だったり、まとまった時間がとれなかったり、スクールが生活圏内にない場合も良いでしょう。
通信講座のデメリット
市販のテキストを利用するより費用がかかります。
自分で時間を捻出することになるので、自宅だとだれてしまったりする場合もあります。
完全に独学で学習するよりは管理されていますが、スクールに通うよりは自己管理が必要です。
仕事に活用できるのか
簿記の3級は実際の仕事で活かすことができるのでしょうか。
たとえば、未経験で経理の仕事がしたい場合、簿記3級を取得することで基本的な知識があることや意欲をアピールできます。
実際の求人でも、経理事務の仕事であれば簿記3級の保持が条件になっている場合が多いです。
2級まで取得しておくことが望ましいとされている場合もありますが、全くの初心者がいきなり2級を取得することは難しいです。
将来的に2級を取得する予定であっても、足がかりとして3級を取得することは無駄にならないでしょう。
また、近年副業を解禁している会社が増えています。
本業の給与所得以外に収入ができると、自分で確定申告をする必要があるのですが、その際に簿記3級の取得で得られる知識はとても役立ちます。
個人の確定申告の範囲であれば3級の知識で充分なので、簿記3級は取得して損のない資格でしょう。
まとめ
日商簿記3級は
・基礎を学べる初心者でも受験しやすい難易度
・知名度があって経理事務の就職や転職に利用できる
・自分で確定申告する際にも役立つ
など、様々な場面で役立つ実用的な資格です。
社会人として持っていて損がなく、全国各地で受験が可能です。
受験料も安価なので興味のある方は一度挑戦してみてはいかがでしょうか。