企業の求める資格として、安定した評価を受けているのが「日商簿記2級」です。
企業の経理担当として、必須スキルが身についている証明になる簿記2級は、人気が高く、時代や流行に左右されない資格といえます。
しかし、日商簿記2級は近年内容の改訂もあり難易度が上がって取得が難しくなりました。
「簿記2級は独学でとれるのか」
「就職に活かすことができるのか」
日商簿記2級を受験しようと思っても、ハードルが高く感じて足踏みしてしまう人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では
・受験要項
・試験のおおまかな内容
・勉強方法
・どんな人が受けているのか
・仕事に活かせるのか
をまとめました。
簿記2級は、人気が高く実用的な資格です。
まずはどんな資格なのか知ってみましょう。
受験要項
受験料
2級 4630円(税込)
各地域の商工会議所で受け付けているので、地域ごとに事務手数料や決済手数料がかかる場合があります。
たとえば、東京23区の場合は事務手数料が540円かかります。
かかってもだいたい数百円程度なので受験料は5000円程度でしょう。
受験資格
特になし
年齢や学歴は不問
3級を飛ばして2級から受験することもできます
問題方式
筆記式
マークシートではないので当てずっぽうでは解答できません
問題数は全5問
試験時間
120分
合格基準
商業簿記・工業簿記、2科目の合計が70%以上
試験日
1年に3回
6月第2日曜日
11月第3日曜日
2月第4日曜日
申込期間
6月試験 3月下旬~4月下旬
11月試験 9月上旬~10月上旬
2月試験 12月中旬~1月中旬
結果発表
試験後1ヶ月~2ヶ月後
商工会議所によって異なります
試験地
各地域の商工会議所・高校・大学・専門学校等
全国各地で開催されています
試験のおおまかな内容
ここからは日商簿記2級について
・問題の傾向
・レベル感
・出題範囲
について説明していきます。
問題の傾向
日商簿記2級は全5問で出題されます。
傾向として
第1問 仕訳問題
第2問 伝票会計や勘定記入など
第3問 財務諸表や精算表の作成問題
第4問 工業簿記の主に帳簿記入問題
第5問 工業簿記の主に計算問題
といった内容の問題が出題されます。
第1問、第2問、第3問は商業簿記、第4問、第5問は工業簿記からの出題です。
あくまで過去の出題からみた傾向なので、回によっては全く違う出題のされ方をする場合もあるので注意しましょう。
レベル感
2級では「商業簿記」と「工業簿記」の問題が出題されます。
商業簿記とはいわゆる普通の簿記。工業簿記は原価計算のための簿記です。
工業簿記は企業で経理をするうえで必要なスキルです。
実は平成28年度から行われた改定で一番影響を受けたのが2級でそれ以前の試験より難しくなりました。
細かな計算作業が得意な方
コツコツ努力できる方
であれば独学でも合格可能です。
出題範囲
毎年度4月1日現在施行されている法令等に準拠して出題されます。
平成28年度から3年で段階的に大幅な改変が行われました。
これはより実践的なものにするための改変で、2級に大きく影響するものでした。
過去の情報や記憶だと出題範囲が現在とは異なる可能性があります。
受験する回に応じて出題範囲をしっかり確認しましょう。
平成30年度(平成30年6月10日施行の149回試験)以降に適応する試験内容を、簿記検定試験出題区分表を参照して以下に記載します。
商業簿記
第一 簿記の基本原理
4.帳簿
補助簿(貴重内容の集計・把握)
第二 諸取引の処理
1.現金預金
銀行勘定調整表
2.有価証券
売買目的有価証券(時価法)、債権の端数利息の処理
3.売掛金と買掛金
クレジット売掛金
5.手形
営業外支払(受取)手形
手形の更改(書換え)
手形の不渡
電子記録債権・電子記録債務
6.引当金
貸倒引当金(個別評価と一括評価、営業債権および営業外債権に対する貸倒れ引当金繰入額の損益計算書における区分)
商品(製品)保証引当金
売上割戻引当金
退職給付引当金
修繕引当金
その他の引当金(賞与引当金、返品調整引当金など)
7.債務の保証
8.商品
3分(割)法による売買取引の処理(月次による処理)
販売のつど売上原価勘定に振り替える方法による売買取引の処理
仕入および売上の返品、割引、割戻
仕入れ及び売上の割引
商品有高帳(総平均法)
棚卸減耗
評価替
12.固定資産
有形固定資産の取得
有形固定資産の割賦購入(利息部分を区分する場合には定額法に限る)
圧縮記帳(2級では国庫補助金・工事負担金を直接控除方法により記帳する場合に限る)
有形固定資産の除却、廃棄
建設仮勘定
減価償却(定率法、生産高比例法)
13.無形固定資産
のれん
ソフトウェア(2級では自社利用の場合に限る)
その他の無形固定資産
15.投資その他の資産
満期保有目的債権(償却原価法(定額法))
子会社株式、関連会社株式
その他有価証券
長期前払費用
17.リース取引
ファイナンス・リース取引の借手側の処理(利子込み法、利子抜き法(定額法))
オペレーティング・リース取引の借手側の処理
18.外貨建取引
外貨建の営業取引(為替予約のための振当処理を含むものの、2級では為替予約差額は期間配分をしない)
21.収益と費用
収益・費用の認識基準(引渡基準、出荷基準など)、役務収益・役務費用、研究開発費、創立費、開業費など
22.税金
法人税・住民税・事業税(課税所得の算出方法を含む)
消費税
23.税効果会計
(2級では引当金、減価償却およびその他有価証券に係る一時差異に限るとともに、繰延税金資産の回収可能性の検討を除外)
24.未決算
第三 決算
3.決算整理
(棚卸減耗、商品の評価替、引当金の処理、無形固定資産の償却、売買目的有価証券・満期保有目的債権およびその他有価証券の評価替(全部純資産直入法)、月次決算による場合の処理、繰延税金資産・負債の計上、外貨建売上債権・仕入債務などの換算、および製造業を営む会社の決算処理など)
5.純損益の振替
繰越利益余剰金勘定への振替
6.その他有価証券評価差額金(全部純資産直入法)
9.損益計算書と貸借対照表の作成(報告式)
10.財務諸表の区分表示
11.株主資本金等変動計算書(2級では株主資本およびその他有価証券評価差額金に係る増減自由に限定)
第四 株式会社会計
1.資本金
設立
増資
2.資本剰余金
資本準備金
その他資本余剰金
3.利益剰余金
利益準備金
その他利益剰余金
4.剰余金の配当など
剰余金の配当
剰余金の処分
株主資本の計数の変動
6.会社の合併
第五 本支店会計
1.本支店会計の意義・目的
2.本支店間取引の処理
4.本支店会計における決算手続(財務諸表の合併など)
第六 連結会計
1.資本連結
2.非支配株主持分
3.のれん
4.連結会社間取引の処理
5.未実現損益の消去(2級では棚卸資産および土地に係るものに限る)
ダウンストリームの場合
アップストリームの場合
11.連結精算表、連結財務諸表の作成
工業簿記
第一 工業簿記の本質
1.工業経営の特質
2.工業経営における責センター
3.工業簿記の特色
4.工業簿記と原価計算
5.原価計算基準
6.工業簿記の種類
完全工業簿記
商的工業簿記
第二 原価
1.原価の意義
原価の一般概念
原価計算基準の原価
2.原価の要素、種類、態様
材料費、労務費、経費
直接費と間接費
製造原価、販売費、一般管理費、総原価
実際原価、予定原価(見積原価、標準原価)
変動費と固定費
製品原価と期間原価
全部原価と直接(変動)原価
3.非原価項目
第三 原価計算
1.原価計算の意義と目的
2.原価計算の種類と形態
原価計算制度
製造原価計算、営業費計算、総原価計算
実際原価計算と予定原価計算(見積原価計算、標準原価計算)
個別原価計算と総合原価計算
全部原価計算と直接原価計算
3.原価計算の手続
費目別計算
部門別計算
製品別計算
4.原価(計算)単位
5.原価計算期間
第四 工業簿記の構造
1.勘定体系
2.帳簿組織
3.決算手続
4.財務諸表
第五 材料費計算
1.材料費の分類
2.材料関係の証ひょうおよび帳簿
3.購入価格(副費の予定計算を含む)
4.消費量の計算
5.消費単価の計算(予定価格による計算を含む)
6.期末棚卸高の計算
第六 労務費計算
1.労務費の分類
2.賃金関係の証ひょうおよび帳簿
3.作業時間および作業量の計算
4.消費賃金の計算(予定賃率による計算を含む)
5.支払い賃金、給料の計算
第七 経費計算
1.経費の分類
2.経費関係の証ひょうおよび帳簿
3.経費の計算
第八 製造間接費計算
1.製造間接費の分類
2.製造間接費関係の証ひょうおよび帳簿
3.固定予算と変動予算
4.製造間接費の製品への配賦(予定配賦を含む)
5.配賦差額の原因分析
6.配賦差額の処理
売上原価加減法
第九 部門費計算
1.部門費計算の意義と目的
2.原価部門の設定
3.部門個別費と部門共通費
4.部門費の集計
5.補助部門費の製造部門への配賦
直接配賦法
相互配賦法
実際配賦と予定配賦
第十 個別原価計算
1.個別原価計算の意義
2.製造指図書と原価計算表
3.個別原価計算の方法と記帳
4.仕損費の計算
補修指図書を発行する場合
5.仕損費の処理
当該指示書に賦課する方法
6.作業屑の処理
第十一 総合原価計算
1.総合原価計算の意義
2.総合原価計算の種類
3.単純総合原価計算の方法と記帳
4.等級別総合原価計算の方法と記帳
5.組別総合原価計算の方法と記帳
6.組別総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算
平均法
(修正)先入先出法
7.工程別総合原価計算
工程別総合原価計算の意義と目的
全原価要素工程別総合原価計算の方法と記帳(累加法)
8.正常仕損費と正常減損費の処理(度外視法)
10.副産物の処理と評価
第十二 標準原価計算
1.標準原価計算の意義と目的
2.標準原価計算の方法と記帳
パーシャル・プラン
シングル・プラン
3.標準原価差額の原因分析
4.標準原価差額の会計処理
売上原価加減法
第十三 原価・営業料・利益関係の分析
1.損益分岐図表
2.損益分岐分析の計算方法
第十四 原価予測の方法
1.費目別精査法
2.高低点法
第十五 直接原価計算
1.直接原価計算の意義と目的
2.直接原価計算の方法と記帳
3.固定費調整
第十六 製品の受払い
1.製品の受入れと記帳
2.製品の販売と記帳
第十七 営業費計算
1.営業費の意義
2.営業費の分類と記帳
第十八 工場会計の独立
(参照:https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2018/01/h30shokai1-3.pdf)
勉強方法
知名度のある資格なので、様々な勉強方法が確立されています。
代表的なものとしては
・市販の参考書を利用して独学で学ぶ
・資格取得系のスクールに通って学ぶ
・通信教育を利用して学ぶ
といった方法が挙げられます。
それぞれメリット・デメリットを説明していきますので自分にあった方法で学習しましょう。
参考書・問題集等を利用して独学で学ぶ
なかなかまとまった時間のとれない社会人の方は、市販の参考書や問題集を利用して独学で学ぶのがオススメです。
参考書・問題集を利用するメリット
独学で勉強するメリットは自分のペースで学習できることです。
まとまった時間をとってスクールに通ったりすることができない場合や、仕事の時間が不規則な場合などは、自分のペースで勉強するのがオススメ。
また、市販の参考書や問題集を利用することで、他の方法より費用がかかりません。
簿記2級は内容の大幅改訂により難易度があがりました。
しかし、まだまだ独学でも合格可能なレベルの資格です。
市販の参考書・問題集を利用するデメリット
自分のペースで勉強できる、ということがそのままデメリットにもなります。
ある程度の自己管理が必要で、わからない部分が出てきた際、調べたりする能力も必要です。
また、簿記は定期的に内容が改定されるので自分の受験する回に合わせた参考書を選ぶ必要もあります。
ゆっくり勉強していたら手持ちの参考書とは出題範囲が変わってしまった! なんてことがないように気をつける必要があります。
内容が改定されるので、参考書や問題集を購入する際は中古ではなく新品を購入するほうが安心です。
スクールに通って学ぶ
簿記は知名度も高く受験者も多いので資格取得用の講義を行っている民間の学校が多くあります。
自分で勉強する自信がない、という方はスクールに通うのがオススメです。
スクールに通うメリット
専門の講師が教えてくれるので、わからない部分を質問できます。
また、教室に通うことで同じ目標に向かって一緒に頑張る仲間ができるので、モチベーションを保ちやすいです。
受験の際、通っている場所で団体受験できる場合も多く、同じ環境で受験することで緊張の緩和にも繋がります。
また、最新の受験情報に対応した講義を受けることができるので、改定などがあっても安心です。
スクールに通うデメリット
独学する場合に比べて費用がかかります。
講義の時間にあわせて教室に通う必要があり、時間の融通がきかない方は通うことが難しいです。
また、スクールが自宅から遠い場合なども通うことにストレスを感じてしまい勉強に集中できなくなってしまう可能性があります。
通信教育を利用して学ぶ
簿記は通信講座も多くあります。
前述した資格取得用のスクールでも、通信講座に対応している場合もあります。
スクールに通えないが講座を受けたい場合は通信講座がオススメです。
通信講座のメリット
自宅にいながら講座を受講することができます。
また、テキストの添削を受けることができる場合も多く、一人では躓いてしまうところが克服しやすいです。
スクールに通う場合と違って自分で時間を作って受講することになるので、仕事の時間が不規則だったり、まとまった時間がとれなかったり、スクールが生活圏内にない場合も良いでしょう。
通信講座のデメリット
市販のテキストを利用するより費用がかかります。
自分で時間を捻出することになるので、自宅だとだれてしまったりする場合もあります。
完全に独学で学習するよりは管理されていますが、スクールに通うよりは自己管理が必要です。
仕事に活用できるのか
日商簿記2級は仕事に活用することができるのでしょうか。
簿記2級は簿記3級に比べてかなり実践的な内容になっています。
そのため簿記2級を取得していれば、経理のできる人材としてアピールすることができるのです。
経理担当はどの企業でも必要な人材です。
多くの企業で求められている資格なので、就職や転職に有利に働くでしょう。
また、簿記2級に合格できる知識があれば、財務資料などを読み取ることができます。
株式投資などの資産運用に役立てることもできるので、一度取得しておけば仕事以外でも役立つ資格です。
まとめ
簿記2級は
・就職や転職に役立つ実用的な資格
・独学でも合格可能
・資産運用にも活用できる
など、様々な場面で役立つ実用的な資格です。
社会人として持っていて損がなく、全国各地で受験できます。
受験料も安価で年に3回試験があるので、興味のある方は一度挑戦してみてはいかがでしょうか。